違法手順
 事故前日、職場で副長とその指示下の2人の3人はステンレス製のバケツ(18g)を用意した。手順書にはこうあった。「SUS(ステンレス)バケツを3個よく洗浄し、溶解用として用意する」
 3人は汚染防護用の手袋、マスク、つなぎの服と靴。取り囲むコンクリート壁は厚い部分で31センチある。工程は事業所でも12年に一回、3人には未経験だった。
 精製済みのウラン粉末をバケツに入れた。黄色でさらさらしている。硝酸を少しずつ加え、注文の濃さにする。ウラン濃度は原発燃料の45倍はある。
 次に手順書から外れ、沈殿槽(内径45cm、深さ60cm)4杯分を注ぎ入れた。バケツから5gビーカーに移し漏斗を使った。保守点検用の穴を使った。この日はそこまででかえった。ウランは槽の底にたまった。

 次の日作業続行。残る三杯分を注ぎ始めた。作業員に臨界の危険性認識はなかった。

 午前1035分。青い光を見た。

違反の文書

 文書番号「MMC97040」。今回の工程を指示する手順書(1997年改訂)には、作成、審査、承認へと6人の7個の印が並ぶ。審査員は現場副長級から4人、最後は現場責任者の製造部長の承認印だ。大学の原子工学科出の技術部門の責任者は「歴代の核燃料取扱主任者(国家資格者)が(違法性を)黙認していた」と述べた。違法の手順書は、約10年前から存在していたとされる。国に届け出た正規の手順は、作業を極力省くが、時間はかかる。バケツのほうが簡単だった。