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「花粉と埋葬の関連」


 5万年以上も前のネアンデルタール人の遺跡(シャニダール洞窟:イラクの首都
バグダッドの北方400km)で花粉分析が行われ、花粉塊の検出などから副葬品と
して花が用いられた可能性が示されました(Dimbleby,1985)。ここでは、千葉県
八街市の古墳の発掘調査から得られた同様な考察が為された例(内山、1991)を
示しましょう。                              
 古墳として認定された塚の主体部に未盗掘の箱式石棺があり、人骨が埋葬され
ていま した。人骨の周囲の土壌24試料を花粉分析しました。すると含有量は少
ないものの全試料から花粉・胞子は19種類もありました。中でも例外的にゴマ
の花粉が67粒も検出された試料が1点ありました。このことは外気に触れず、ま
た堆積環境にない状況から判断して人為的な混入によるものと考えました。人為
的な可能性としては…、                         

1)土壌採取時の混入  
2)分析処理過程での混入
3)埋葬時の混入    
                     の三点が考えられます。

 1)は担当者が全試料を同時に採取しており、1試料のみに局在していることと
矛盾します。また、採取時は周囲で栽培されているゴマの開花期を過ぎた12月15
日であり、現在栽培中のものから直接運搬されたものとは考えにくいのです。
 2)は再度、他の試料とともに分析処理をおこなっても同じ結果が得られました。
 3)の可能性は本古墳が築造された約1300年前にゴマが栽培されていたことを前
提としなければなりませんが、埼玉県岩槻市の、約1200年前の遺跡の泥炭中から
もゴマの種子が発見されており、ほぼ同時期の栽培は十分に考えられました。  
 もし当時の権力者にとってゴマは貴重な植物であり、その花が副葬されたものであ
るならば、この石棺の築造は夏におこなわれていたことまで類推されるのです。 



古墳より検出されたゴマ花粉

光学顕微鏡写真像(約850倍)

現世ゴマ花粉の走査型電子顕微
鏡写真像 (約1,350倍)


 
ゴマSesamun indicum 千葉県山武郡植栽 1990.9.20




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